4月24日の午後の外来も予約診療が終わったころ、YSさんが来られました。1年ぶり以上です。
カバンからワインを取り出し、診察室で「ハッピバースデイツーユー」と歌いだしました。
彼女は大変な難病を抱えており、専門病院の複数の科にかかっています。高額の薬を使い、それによる副作用も抱えて、何とか乗り切っているのです。病状は緩解憎悪悪を繰り返し、次第に下降線を下っていることは、彼女自身十分理解しています。下肢には結節性紅斑が何か所もできていて、一時は歩けなかったといいます。それなのにその振る舞いはとても明るく、周囲はその病状を聞いてなんて言葉をかけたらいいかなんて悩むことはありません。相手に気を使わせないその振る舞いも、もしかすると計算のうちなのかもしれません。
ヴィネの誕生日を覚えていることに驚くと「だって私の仕事復帰の日と同じなんですもの」と。昨年の今日、彼女は仕事を再開したのです。あまりにも明るくふるまうため、周囲から「(仕事休んでばかりいるけど)本当に病気なの」と言われたりするそうです。
「去年受診しに来たときは先生体調悪そうだったからね」
「ん?あー肋骨骨折かな」と、薄れた記憶をたどると
「それはその前の年」と即座に訂正されました。
自宅に帰って当時の記録を見ると、昨年の診察のころは半年に一度の不明熱でダメージを受けていた時でした。
30分間病気発症に至るまでのこと、将来のこと、友人のことなど話すことができました。年を取ると誕生日なんて少しもうれしくはないものですが、今年は一生忘れない特別な誕生日になりました。