80歳の患者さんが、最近受けたCTかエコーでのあと、医師に
「子宮筋腫の手術をしたっていうけど、卵巣もとったみたいですね」
と言われたというので、ヴィネは「え~、本当ですか。○○さんの年齢だと卵巣は非常に委縮していてCTやエコーでは確認できないんと思いますよ」といいました。
そもそも「ある」ことを証明するのは簡単ですが、「ない」ことを証明するのは非常に困難なことが多いです。例えば「月には生物は存在しない」とはいまだに言いきれませんからね。
この患者さんは「まだ20代のころ子宮筋腫で子宮をとったんですが、その時卵巣まで取ったって言われなかったんです。そして手術後50歳まで、そこでずっとホルモン注射受けてました」と続けました。その話を聞いてこの方は卵巣をも切除したとヴィネは理解しました。とったからこそホルモン治療が必要だったんでしょうね。
ヴィネは27歳の患者の卵巣まで取っちゃうという乱暴な話にぶったまげました。そしてヴィネが医者1年目のことを思い出しました。
手術の手伝いのバイトに行ったときのことです。まだ22歳くらいの既婚の患者の良性卵巣嚢腫のオペなのですが、「あ~あ、両方とも卵巣嚢腫だよ。かわいそうになあ」と言いながら、躊躇することなく両側卵巣を切除したのです。「え!!!やばいだろう」と思いましたが、声には出せませんでした。
医者になってまだ2,3か月ですから、おかしいと思いながらも「もしかすると自分の知らない医学的根拠があるのかもしれない」と思って、その場を去り、後ほど先輩医師にその話をしました。当然ですが両側卵巣を取ってしまえばこの方の子供を作るという夢は一生奪われるどころか様々な、健康上の不具合が生じること間違いなしです。ましてや良性なら、わずかでも健常な部分の卵巣を残すべきなのです。
80歳の患者さんの話に戻りますが、この方は27歳の時にもほかの産婦人科で、10個くらいのホルマリン漬けの標本を見せられ「あなたの子宮はこのくらい大きい。すぐに手術しましょう」と言われたのです。おばさんに当たる人が「あなたまだ子供もいないんだからちょっと待ちなさい」といって大学病院を受診しました。そして子供をもうけた後に、前述の医院で手術をしたのです。
なぜ異常ない卵巣まで取ったのかですが、これについては憶測なのでここには書きませんが、本人には言いました。するとこの患者さんはもう50年以上前の話ですから笑いながら「やぶですね」といってました。
いや、やぶよりひどい密林でしょ