ある総合病院の緩和病棟の話です。
入院患者さんは皆癌末期です。
そこに入院している癌の多発骨転移の方ですが、今回転倒に伴い大腿骨の骨折をして手術してそのまま緩和病棟に入りました。転移したところが折れたわけじゃないので、リハビリによってまた立ってトイレに行く可能性は残っているはずです。寝たままではなかなか便が出なくて立った瞬間便が出てしまったこともあり、本人も自力でトイレに行くことが今の大きな希望となっています。しかし病院側からは「もし歩くようになったらまた転ぶ可能性があるので危険ですから、家族のほうからもう歩くのは無理と説得してください」といわれたというのです。そうなると家族はついつい納得して何とかして本人を説得しようという行動を取ろうとするでしょう。
これって今まで医学的には正しいと考えられてきました。しかし終末期医療の立場から見ると、今まで正しいとされてきたことを見直さなければならなくなってきています。
終末期にはいろんなことが制限を受けてくるわけです。今までできてたことが急にできなくなると、人は誰でも気分が落ち込みます。何かの希望がなければ鬱状態になることもあります。そうすれば意欲低下食欲低下睡眠不足認知障害が出て寝たきりになることは間違いなし。
もちろん危険は伴いますが、もし立つことができるようになれば、本人の最後まで自分らしく生きようという意欲はもちろんのこと介護するほうも楽になります。
たとえ末期であっても立つということは非常に重要なのです。安全を最優先にして運動量を減らすことは後々大きなツケを伴うことを理解するべきでしょう。緩和病棟はそこまで考えてほしいですねえ。