不耕起栽培の記事にに関して、養老孟司氏がコメントをのこしています。
人は1万年の間、さんざん土を掘り返し、それが農業だと思ってきた。今更掘り返さない方がよかったと言われると、一瞬唖然とするが、これは農業に限ったことではない。
人は思うようにならないと気が済まない。自然も人生も「予測と制御」ができると思っている。徹底的に人工的な環境に住んで、努力すれば報われるという社会を作ってしまった。しかし本当だろうか?自然は思い通りにならないことは、自然災害が多い日本に住んでいればしばしば実感しているはずだ。
みんな毎日あくせくと生活のため、または社会に貢献するために働いている。そんなに働かなきゃいけないんだって疑問を持ったことはないだろうか。しかし畑を耕すのと同じで、何もしなくても(実際はいろいろやっていますが)同じくらいの効果が得られるかもしれない。(以上ヴィネが一部改変)
衣食住、われわれの身近なものを見ても、あまりにも自然からかけ離れているものを、むしろ人間は好んでいるなあって思いませんか?高層マンションに住んでエレベーターでヒューっと自室に向かい、人工物で囲まれた部屋から夜景を見て暮らすとか、あまりかむ必要のない柔らかい食事を好んだり、飲み物でカロリーとったり・・・。
医療もそんな気がしています。食事と運動と睡眠は健康の3原則ですよ。これが十分できていれば半分の病気は薬なしで回避できるはずです。糖尿病は運動と食事療法が基本なのに、ほとんどの医者はそこに言及せずに、いや、言及したとしてもほんのさわりだけですぐに薬物療法に走ります。糖尿病薬は非常に多いのですが、その知識はとても豊富です。しかし食事と運動に関しての知識は薄っぺらです。患者だって今までの甘美な生活からは抜け出したくないのです。
中年以降の人で十分な運動できている人って1%もいないんじゃないでしょうか。世の中運動しなくていいようなものばかり次々と作られます。そのうえキックスケーターなんて存在すべきじゃないですよ。睡眠を気にして生活している人ってどれだけいますかね。無意味に夜更しする人も多いです。寝ている時間が無駄とでも考えているんでしょうか?
不耕起栽培に倣って、医療も原点を見直すべきだな、っと一人強く思っています。しかし実際の診療の現場では、相手が自分の考えを強く言い出してきた場合は、「これは言ってもムダだな」と判断して主張を取り下げてます。