ヴィネは1年3か月小麦を99.9%やめた経験があります。これで体が変わったかというと、ヴィネの場合は何も変わりませんでした。アレルギーがないのになぜ小麦断ち生活をしたかというと、単に「やめたら何か変わるのかな」と、興味を持ったからです。それは「ジョコビッチの食事」を読んで思いつきました。
やめることでまず気づいたのは「世の中これでもかというほど小麦に囲まれている」という驚きです。小麦を断つことでそこから解放される境地に立った気もしましたが、小麦によって何の症状もきたさない人間が、それを断つというのは、結構社会生活に制限がかかることもわかりました。
小麦断ちをきっかけに小麦の本も読みました。現代人は小麦という麻薬に毒されているという言葉もあながち嘘ではないと思われました。こういう経験をするとでさらに食に対する意識が高まり、診療に生かせるようになりました。これは口先だけでカロリー制限しなさいと言って、その中身に言及できない医者との大きな違いとも言えます。
日本人には小麦アレルギーの人は少ないように思いますが、アレルギーがあっても軽度なら、まさか毎日食べているパンやラーメンが病気の原因だなんて気づかないでしょう。
あるニキビの若い女性が受診されました。この方は中学生のころからニキビに悩まされていたといいます。2か所の皮膚科では全然よくななかったといっています。なぜ当院を受診されたのかはわかりませんが、最近小麦をやめたらよくなってきたと話していました。
いつもの通り、ヴィネは食事についてかなり突っ込んで聞き取りました。するとこの方は非常に食に対する関心が深く、自分で食事を変えるということにも積極的に挑もうとしている様子がうかがえました。外来で診察をしていても、ヴィネが食事の話をし始めると「あ、聞いていないな」と感じる人や、そこまでではなくても「記憶にはとどめていないな」と感じる人は多いです。でもこの方はまなざしから真剣さが伝わってきました。そうなるとヴィネの解説にも熱が入ります。3度目の診察では、言われなければニキビで悩んでいるとは思えないくらいの、きれいな肌になっていました。
ニキビとアレルギーは別物ですが、「そういえば小麦を食べると首あたりがかゆくなることに気づいた」といっていましたから、あながち無関係ではないのでしょう。
皮膚の病気は食事との関係が強い印象があります。もし自分の皮膚の病気が改善せず混とん状態に陥ったなら、基本に戻るのが解決の一番早い道筋です。その基本の根幹にあるのが「食」なのです。