アンディは食べ物に対する尋常ならぬ興味があります。言葉を変えると、非常に食いしん坊です。
一日3回の食事は秒で終わります。ほかの犬の食事風景を見ると、ゆっくり時間をかけているものもいれば、器にたっぷり、一日分?二日分?と思われる量がよそられている犬もいます。アンディだったら残すことなくすべて食べてしまうでしょう。
ヴィネが仕事から帰ってくるとき、すでにアンディは夕食が終わった後です。ヴィネはまず風呂に入ります。するとアンディは台所と風呂の間を頻繁に行ったり来たりします。まるでヴィネが風呂から上がるその瞬間を見逃してはいけないと思っているようです。そしてヴィネが風呂から上がり食事のためにテーブルに着くまで常にヴィネの後ろをついて回ります。そしてヴィネが椅子に座ると、まるで召使のごとくその右側に構えます。それはヴィネが右斜め向きに座るからです。もし左に座ったらヴィネの背中を見ることになっちゃいますから。
そしてヴィネが食事をし始めると、じっとその姿を見つめます。そしてその床にはポタポタとよだれが落ちます。ヴィネと目が合うとしっぽを振ります。
ヴィネがそのまま無視するとヴィネの太ももに顎を乗せて、存在をアピールします。
それでも状況に変化がないと太ももに足をかけてきます。
ヴィネがサツマイモを食べているときなど、興奮は頂点に達して、ヴィネの口元にまで顔を近づけて芋を横取りしようとさえします。
このアピールするしぐさを見て、食べ物をあげないなんて鬼か悪魔かプーチンか!誰だってあげたくなっちゃいます。
しか~し!
そこは食養生医ヴィネです。アンディの食欲は底なし沼ですから、甘やかしません。好きなだけあげたらどんどん太ってしまいます。同じビーグルでも13キロになった犬もいます。アンディは1年3か月前に拙宅に来たときは10.5キロでした。ちょうどいい体重です。今もほぼその体重を維持しています。さらに1年3か月まえに比べて運動量は飛躍的に増しているので、脂肪が筋肉に置き換わっているはずです。
だから与えるときは少しずつ、アンディから見たら「なんだこれっぽっちかよ」と思われるほどです。そこでもっと欲しい気持ちを表現するためにその場でぐるっと回ったり、鳴き声のトーンを変えてみすぼらしく泣いて同情を誘おうとしたり、さらに、右だけじゃなくヴィネの正面からアタックしてきたり、でもそれじゃテーブルが邪魔になってくるので「万が一」の確率を考えて左に回って要求したりと、あの手この手を使って少しでもたくさんの食べ物をゲットしようとします。
これが人間だったら「うざっ」といわれそうですが、ここまでしてもそうされない見越されているのかもしれません。
体重を増やしてはいけない理由がもう一つあります。11キロ以上になるとフィラリアの薬の量が増えるので、医療費の負担が増えるのです。太ると医療費が増えるというのは人にも言えることです。犬も人も医療費を安くする一番いい方法は「減量」に限ります。
さてヴィネが完全に食事が終わり、もうヴィネから何もおこぼれにあずかれないと悟ると、アンディは次に確率の高そうな家族のもとに行って要求します。次男は絶対にくれないので、次男のもとにはいきません。
以上、アンディが拙宅に来て人間観察を行って導き出した確率論です。犬を使ったパブロフの条件反射の実験は世界的に有名ですが、将来「人間社会に生息する犬の食確率論」も有名になるかもしれません。